歳時記

嫌味な一言

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先夜、娘が、評判の食パンを銀座で買ったと言って持ってきたそうだ。

私は愚妻に言った。
「ウチのためにわざわざ買ってきたのか、自分のところに買ったついでウチにも買ったのか。どっちなのかによって、価値はまるっきり変わってくる」
「そんなこと言ってなさいよ、嫌われるから」

そして、
「あのコが言っていたわよ。〝お父さんは、いつ死んでもおかしくない年齢なのよね〟って」

愚かな女だ。
自分だって、それは同じではないか。

「あら、私のことは言ってなかったわよ」
「バカ者。本人を目の前にして、娘は遠慮しただけだ」

そして、愚妻に説教した。
「老少不定なれば死を時を選ばず。老いも若きも年齢にかかわらず、死ぬときは死ぬ。父親のことを心配する前に、自分と自分の家族のことを心配しろと、娘に言っておけ」

すると愚妻は、つまらなさそうな顔をして、
「あなたのことを心配して言ったわけじゃなくて、心づもりみたいよ」
嫌味なことを言うのだ。

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