歳時記

「疲労回復ウェア」の余波

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尺八のCDを毎夜聴きながら眠りについている。
熟睡感があるので、効果があるのだろう。

これに刺激されたか、
「ちょっと、これ、身体にいいんだって」
愚妻がテレビの通販番組で「着るだけで疲労回復」というウェアを購入したのである。

2セットだ。
おそらく2セットだと割引率が大きかったのだろう。
通販の口車に乗せられたのに違いないが、そんなことを言えば修羅場になる。
部屋着なのかパジャマなのか判然としないが、こんなものが効くのだろうか。
ケチをつけると修羅場になる。

「おっ、いいじゃないか」

さっそく着用して、
「おっ、手の指先がジンジンと痺れてきたぞ」
「それよ、それ。効いてるのよ!」
満面の笑みを見せたのである。

ところが、余計なことを言って喜ばせたものだから、愚妻がすっかりその気になっている。

朝起きてくると、
「あら、着てないの?」
眉間にシワを寄せる。

日中は日中で、
「バミューダなんかやめて、これを着てなさいよ。あっちが痛い、こっちが痛いって言うんだから」
口うるさいのだ。

で、一計を案じた。

「おい、もうひと組みあるんだから、おまえも着たらどうだ。自分が体験せずして勧めるのは問題があろう」
「そうね」

そんなわけで、我が家は朝から夫婦して同じウェアを着ている。

「どうだ、効果があるか?」
「いま着たばかりじゃないの」

一時間おきに効果を問いかけるが、
「ウーン、まだみたい」
「おまえは素直でないから効きが悪いのだ。わしは指先がジンジンだぞ」

指先ジンジンはいつものことで、キーボードを長く叩くと痺れてくるのだが、もちろん愚妻にはそんなことは言わないで、
「おまえは素直ではないから」
と攻め立てたところが、
「あなたには効くんだから、あなただけ朝も夜も着ていればいいのよ」

切り返してくるのだ。

実際、機能的な意味でも効果はあるのだろう。
期待しつつ、着用している次第。

さて今夕は、保護司活動の一環として、「社会を明るくする運動」で駅前に立つ。
いまだに腰に違和感があり、立ちっぱなしだと、たちまち悪化するが、そんな素振りを見せようものなら、
「だから朝も夜も着てればいいでしょ!」
噛みつかれるだろう。
「疲労回復ウェア」のおかげで、夫婦ゲンカのタネがひとつ増えたのである。

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