歳時記

誕生日と胃潰瘍

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 12月3日で63歳になった。
 老い先短くなっていくことに快感がある。
 マラソンランナーほど頑張ってはこなかったが、一つ歳を拾うごとにゴールが近くなり、もう走らなくてよくなるのだと思うと、何となく気分が浮かれてくるのである。
 普段から、そんなことを口にするものだから、愚妻も私の人生については達観しているようで、私の代わりに胃カメラの検査結果を医者に聞きに行き、
「胃潰瘍だけど、ピロリ菌はないそうよ」
 と、実につまらなさそうに言う。
 そして、
「あなたと違って、私の胃はとてもきれいで」
 と得意になってしゃべっている。
 結局、私の胃潰瘍については何がどうなっているのか、ついぞ愚妻から説明はなかった。
「還暦以後は余生」
 と、いつも嘯(うそぶ)いているだけに、
「で、わしの胃潰瘍はどうすればいいんじゃ」
 とは意地でも問わないのだ。

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