歳時記

無益な殺生と「孫」

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 小一の孫が来たので、遊び道具にと、海釣りの竿を出してやった。
 投げ釣り用の長い竿、ゴムボートから釣る短くて細い竿など何本もある。
 五年前に得度して、釣りはやめた。
 無益な殺生はやめようと思ったのだ。
 ところが、孫と竿を振りまわしているうちに、
「よし、春休みに釣りに連れて行ってやる」
 思わず口走ってしまったのである。
 孫は、
「やった!」
 と喜び、私は、
(しまった!)
 と後悔である。
 困った。
 実に困った。
 私は口にした約束だけは絶対に守ることを信条としている。
「おい、どうしたらいい」
 愚妻に助けを求めたが、
「いいとこ見せようと思って、自分で約束したんでしょ」
 と、ニベもないのである。
 書いてみたいテーマがあって、その参考にと、いま手もとに「金子みすゞ」の詩集がある。
 命について書いてある。
 困った。
 実に困っているのだ。

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