歳時記

人間、努力するようではダメだ

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 今朝、畑へ行った。
 春野菜を植えるシーズンとあって、87歳の映芳爺さんが異様に張り切っている。
 いや、映芳爺さんだけでなく、愚妻も異様に張り切っているのだ。
 なぜなら、自分専用の〝花コーナー〟をつくるからで、何だかんだ花を買い込んできて準備万端なのである。
 で、いざ畑へ到着すると、
「花は私がやるから、よけいなことしないでよ」
 鋭く命じて、愚妻が熱心に鍬(くわ)を振るい始めた。
 途中、私が気をきかせて水を撒こうとすると、
「ちょっと、余計なことしないでって言ったでしょ!」
 子を守る母猿のように、攻撃的な言葉を吐く。
 いやはや熱心なのである。
 故人になられたが、気学の会長さんが一杯やりながら、
「人間はね、努力するようじゃだめなんだ」
 と私に話してくださったことがある。
 趣味や遊びなど、好きなことやるときに「努力」する人はいないわけで、何事においても努力するようでは、
「生き方として間違っている」
 というわけである。
 愚妻は熱心に鍬を振るい、映芳爺さんは喜々としてホウレソウの種を撒いている。
 二人の姿を眺めつつ、
(なるほどなァ)
 と、気学の会長さんの言葉を思い出したのである。

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