歳時記

雨に打たれるカタツムリ

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『蝸牛角上 何事をか争う』
 という諺が、私は大好きである。
「蝸牛(かぎゅう)」はカタツムリのことで、「蝸牛角」は頭部からニョロリと突き出した角のことだ。
『壮子』の「則陽」篇に、
「かたつむりの左の角の上にある触氏の国と、右の角の上にある蛮氏の国とが領地をめぐって戦争し、数万の戦死者が出た」
 という寓話があり、愚かな争いをたとえて、
『蝸牛角上 何事をか争う』
 という。
 そして、この詩は、
「人生は短いのだから、不平不満をいったり、つまらないことで争ったりせず、酒を飲んで楽しく暮らしていこうじゃないか」
 と、人生無常の感慨と飲酒の楽しみを詠じる。
 酒を「たとえ」とすれば、
「楽天人生のすすめ」
 とも読み取れるのだ。
 昨朝、玄関前の植木の葉っぱの上で、カタツムリが雨に打たれながら、ノロノロと進んでいる。
 頭部に「蝸牛角」がニョロリ。
 それを見ながら、
『蝸牛角上 何事をか争う』
 という言葉をつぶやいてみた。

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