歳時記

巧妙な「アポの取り方」

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 早寝早起き、原稿書き。
 これをモットーにしてきたが、ここ2週間ほど生活時間は乱れっぱなしである。
 原稿の〆切りに加えて雑用山積で、アゴが上がりそうだ。
 そして、こういうときに限って、余計なアポの電話が入ってくる。
「お時間があればお目にかかりたいのですが」
 と相手が言えば、
「6月中旬まで忙しいので、そのころもう一度お電話ください」
 と断ることができる。
 ところが相手は、
「お時間をつくっていただけませんか」
 と言ったのである。
 これには困った。
「時間があるか」
 という問いかけは、「ある」か「ない」かで答えればよい。
 しかし、
「時間をつくってくれ」
 という問いかけは、
「あなたは、私のために時間をつくってくれる意志がありますか」
 と、私の意志を問題にしているのだ。
 したがって返答は「時間がある」「なし」ではなく、
「あなたの申し出を受けるか、受けないか」
 ということになる。
「お時間をつくっていただけませんか」
「いいえ、つくる気はありません」
 とは言いにくいものだ。
 かくして、相手の巧妙な実戦心理術に搦(から)め取られた私は〝日程交渉〟に引きずり込まれ、雑用を一つ増やしてしまったのである。

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