歳時記

「いい人」は貧乏クジを引く

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 昨日――と書き始めて、日付が変わっているのに気がついた。
 正確には一昨日。
 小学館『マイファーストビッグ』から編集者とライター、それにカメラマンが取材に来訪。会社の処世術を描いた漫画『総務部総務課山口六平太』の挿入コラムのインタビューである。
 テーマは「いい人が、ワルに騙されずに世の中を渡る方法」。
 優秀かつ愉快な方々で、楽しい取材であった。
「いい人」とは「どんな人間」を言うのか。「いい人」であるがゆえに貧乏クジを引かされる人間は、どう対処すればいいのか――。まっ、永遠のテーマですな。
 私は「いい人」だと自認しているし、いつも貧乏クジを引かされていると思っているのだが、周囲の連中にそう言うと、
「まさか」
 と一様に目を剥く。
 この反応に、今度は私が「まさか」と目を剥くのだが、自己評価と他人評価のギャップは埋めがたいものがあるということを、いまさらなが思い知るのである。
 今日――正確には昨日か――浅草に行った。
 紬の作務衣を持っているのだが、これが気に入っていて、色違いを頼んでおいたところ、入荷したとの電話を店からもらったからだ。
 雨が降っていたが、すぐさまクルマを飛ばした。
 ついでに、雪駄を浅草の老舗で買ったところ、
「雨の日に履いてはだめですよ。もし外出先で雨が降り始めたら、すぐに雪駄を脱いで、フトコロにしまうんですよ」
 と若旦那が注意してくれた。
(いい人だな)
 と、私はうれしくなったが、ふと、
(雪駄をフトコロにしまったあと、裸足で歩けということなのか?)
 帰りのクルマのなかで首をひねりつつ、面倒な雪駄を買った、と後悔した。
 私が雪駄を買う前に注意してくれれば、もっと「いい人」なのに、と思ったが、そうすれば私は買わなかったかもしれない。
 なるほど、「いい人」は貧乏クジを引くというわけか。
 インタービューの翌日、合点した次第である。
 

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