歳時記

「格差社会是正」というまやかし

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《金は天下のまわりもの》という言葉がある。
 意味をご存じだろうか?
「いつかは自分のところにも金がまわってくること」
 とノンキなことを言っているようでは、死ぬまでお金はまわってこない。
《金は天下のまわりもの》とは、「誰かが誰かを喰うことで世の中は成り立っている」ということなのだ。つまり、AさんがBさんを喰い、BさんがCさんを喰い、CさんがDさんを喰い……という連鎖のことを《金は天下のまわりもの》というのである。
 以上の考え方は、『漫画大衆』誌で連載した『ヤミ金融一番星』の原作を私が書いたとき、主人公に言わせたセリフである。
 私は――いや、誰でもそうだろうが――資本主義とは弱肉強食であると思っている。強者が弱者を喰い殺し、弱者が滅んでいくことを、人間社会における「自然淘汰」と言う。腹立たしい限りだが、残念ながらこれが現実であり、「万人平等、万人幸福社会」を叫ぶのは、ウサギがライオンを諭し、ハトがタカに抗議するようなものなのだ。
 ならば、なぜ政党は「福祉の充実」や「格差社会是正」をスローガンに掲げるのか。
 選挙用である。
 国民のためを思う真摯な政治家もいるだろうが、ひとえに選挙用の政策なのだ。
 よくよく考えてもらいたい。「格差是正」と言えば聞こえがいいが、ウサギとライオンの〝格差〟は、どうすれば是正できると言うのか。ハトとタカとが、どうすれば仲間になれるというのか。
 ここに「格差是正」のまやかしがある。
 本気で「格差是正」を目指すなら、「下流社会」と「上流社会」を一緒にしてガラガラポンとやるしかないのだ。ウサギがライオンになれないなら、ライオンが牙と爪を抜いて初めて立場は平等になる。ライオン――すなわち富裕階級がビンボー人に私財を投じるや?
 答えはいうまでもないだろう。
 これが、現代日本のなのである。
 サッカーのワールドカップがまもなく開催される。
 ニッポンコールが茶の間のテレビに響き渡るだろう。
 これから日本はどこへ向かうのか。
 そのことにも思いを馳せてみたいものである。
 
 

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