歳時記

医学と人生の「名医」とは

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 首が痛い。
 最初、寝違いを起こしたのかと思っていた。
 ところが三週間以上たっても治らない。
 で、今朝、病院へ行った。
 5年前、ヒザの痛みが脊柱管狭窄症からきていることを見つけてくれた医者で、私は全幅の信頼おいている。
 レントゲンの結果、少しゆがみがあるということだが、
「ま、脊柱管狭窄症の人は、がいして首筋もよくないものです」
 明るくおっしゃって、
「私だって、忙しいときは肩も首も張ってきてつらいんです」
 歳を拾えば、あっちこっちガタがくるもんだ、と言外におっしゃったのだろう。
「そうですね。気にしないようにします」
 私も明るく返事した。
 脊柱管狭窄症によるヒザの痛みは、神経根ブロック注射で消え、その後、痛みは出ていないが、これについてもお医者さんは、
「ま、痛くなったら、なったときに考えましょう」
 明るい言葉に、私の返事も、
「そうですね」
 と明るくなる。
 なるほど、患者の不安を取り除いてくれるところが、名医の名医たるゆえんだろう。
 感心しながら病院をあとにして、途中、なじみの鰻屋に寄った。
 店のご主人に、
「そこの病院に行ってきたんですよ」
 と告げると、
「お見舞いなの?」
 ご主人には、この私が病気になるようには見えないということか。
 これはこれで、気分は悪くないのである。
 もし〝お世辞〟た゜としたら、ご主人は私の気分をよくするということにおいて、「人生の名医」ということになる。
 医学も人生も〝名医〟とは、「相手を安心させ、喜ばす人」ということになるのだろうと、今日はつくづく思ったのだった。

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