歳時記

「石にクギ」のリアクション

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「昼、なに食べる?」
自宅にいると、愚妻が問う。

「ヒラメの活き造りだ」
「バカみたい。そんなものがあるわけないでしょ」
「なにを食べるかと訊くからそう言ったまでで、問い方に問題がある。問いかけは、これとこれとこれがあるがどれにする、とメニューを口にしてチョイスを訊くべきではないか」
「うるさいわね。そうそう変わったものがあるわけないでしょ」

反省も、向上心のカケラもないのだ。

空手・古武道の指導をやめたせいか、人に会ったり話したりする機会が少なくなった。

葬儀や法事に出かければもちろん話をするが、こういう席での話題は限られていている。

だから、愚妻相手に話すことが必然的に多くなるのだが、向上心のカケラもない人間に話すのは疲れる。
「糠にクギ」であればまだしも、「石にクギ」で低俗な反論をしてくるのだ。

先日、店で愚妻と刺身を食べながら、ふと思い立ち、

「マグロは獲ってのち、トロを切り取ることができる。トロが海を泳いでいるわけではない。しかるに、この当たり前のことを忘れ、一足飛びに欲しいものを手に入れようとする。心すべし」
「なにゴチョゴチョ言ってるのよ。お店の人にヘンな年寄りだと思われるわよ」

腹立たしいことを言うのである。

12月に入って、早くも一週間がすぎた。
次から次へと雑用に忙殺されている。

雑用さえなければ身を入れて原稿を書けるのに、と嘆息して豁然とさとった。
そうだ。
そもそも人生は雑用で成り立っているのだ。

「おい、わかったぞ。人生は雑用で成り立っているのだ!」
昨夕、愚妻に言うと、
「しょうもないこと言ってないで、さっさと風呂に入って着替えてよ。洗濯するんだから」

「石にクギ」のリアクションなのだ。

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