歳時記

帽子と保管

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昨日も法事の出仕があり、出かける前にふと、茶人帽を持っていることを思い出した。

茶人帽というのは、千利休が被っている、例の帽子だ。
そういえば坊さんで被っている人もいる。

ずいぶん昔、作務衣用に買っていたものだが、ハットからハンチングまで帽子だらけなので、茶人帽を被る機会がなかった。

そうだ、法衣にはあれが似合うではないか。

何でも買いそろえておくものであるとニンマリしつつ、取り出して見たら数カ所、極小の穴が空いている。

「なんだ、これは?」

愚妻に問うと、
「虫が食ったのよ」
「なんと、虫が食うのか!」
「布だもの、喰うに決まっているでしょう」
平然と言ったものだ。

「虫が食うとわかっていれば、家庭をあずかる一家の主婦として、なぜ対策を講じない」
厳しく叱責すると、やおら黒色の油性マーカーを取り出して、チョンチョンと塗り、
「はい、これで穴は見えなくなったわよ」

コゲ茶色の茶人帽なので、確かにちょっと見にはわからない。
だが、よく見るとわかる。
そのことを、これまた厳しく叱責すると、
「あなたの帽子に誰が顔を近づけて見るのよ」

言われて見ればもっともとだが、やはり気になる。
帰宅しすぐ、新しい茶人帽を購入した次第。

帽子は私の管理なのだ。
買うたびに、
「いくつも買って被れないでしょ」
愚妻が批難するので、私が管理することにしたのである。

だか、虫が食うというのは衝撃的だった。

数年前、銀座で買って一、二度しか被らず、仕舞い込んでいるハットもある。
結構な値段のものだ。
保存状態はどうなのか。
気にはなるが、見るのも恐いのである。

 

 

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