歳時記

散歩コースと「犬友」

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私の散歩コースは彼岸花が散ってコスモスが風にそよぎ、気持ちのいい季節になった。

私は彼岸花が好きではないのだ。
彼岸花には可憐さもなければ気高さもない。
赤い色は、存在感を誇示する濃い口紅のようで好きになれず、お彼岸の時期に引っかけて、
「地獄花」
と、私は呼んでいる。

それに引き替えコスモスは見ていて気持ちがよく、この時期の散歩の楽しみでもあるのだ。

涼しくなったせいか、犬の散歩が夕刻の早い時間に多くなり、私の散歩の時間とぶつかってしまう。

犬の散歩は圧倒的に女性が多く、「犬友」が二人、三人と道の真ん中に立ち止まって談笑している。

私は避けるようにして道の端を歩くのだが、リードを伸ばしているので、
「ワンワン」
と、私に吠えたり。

「○○ちゃん、だめでしよ」
飼い主がたしなめるが、声と表情からして、ちっとも悪いと思っていないことがわかる。
これが「犬友」という団体力なのだろう。

不機嫌な顔をするのも大人げないので、「被害者」でありながら、そそくさと通り過ぎていくのである。

帰宅して愚妻にそのことを話すと、
「あなたも犬を連れているフリをして仲間に入れてもらいなさいよ」
妙なことを言う。

「なんだ、それ」
「ギターであるじゃないの。カッコだけで、弾くマネをするやつ」
「エアギターか?」
「そうそう、それよ。〝エア犬散歩〟をすればいいじゃないの」
「バカ者。ヘンな人に見られて110番されるではないか」
「どうせヘンな人なんだから、いいじゃないの」

世はまさにバーチャルである。
Eスポーツというのもある。
そのうち、いかに仕事をしているふりをするかで給料が査定される「エアー仕事」なんてのも出てくるかもしれない。

歓迎すべき時代の到来なのか、散歩しつつ、私はいささか懐疑するのだ。

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