歳時記

苦は、押し寄せる波の如くである

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愚妻が手術した傷口のあたりに水が溜まってきた。
乳房の部分だけでなく、脇の下のリンパも切除したのだが、そこに溜まっている。

術後は抉(えぐ)れた部位を見せ、
「ほら、ここがこんなに凹んだのよ」
とガッカリした声で言っていたが、日がたつにつれ、
「ほら、だんだん盛り返したきたわ」
弾んだ声になっていた。

私も、
「おっ、さすが回復が早いな」
調子よくヨイショしてやったところが、次第に盛り返しが過ぎてきた。

何のことはない。
水が溜まっていたというわけ。

夫婦して、こういうことには疎(うと)いのだ。

診察してもらい、何回か水を抜きに病院に通うことになった。
拙宅から病院まで10分ほどだ。

「タクシーかバスで行くからいいわよ」
愚妻はそう言うが、
「じゃ、そうしろ」
とは、とても言えない口調なのだ。

しかも、すぐ近所にあるドラッグストアに行って三角巾を買い、右手を吊って病人であることを無言でアピールしている。

病院は近くではあるが、クルマを駐車場に停めたり、診察や会計を待っていると結構な時間がかかるのだ。

私がヒマならそれでも構わないが、冷え込む2月は葬儀が続き、これに法事が加わるので忙しい。
原稿も何とかしなければならないのだが、水が引かなければ放射線治療が延期になる。

放射線はウィークデーに毎日照射し、30回だか35回ほどだ(回数を聞いたが忘れた)。

一ヶ月以上も、私が送迎しなくてはならない。

空手の指導から解放され、これからはできるだけノンキに過ごそうと思っていたのに困ったものだ。

結局、人生というやつは、繰り返し押し寄せる海の波と同じで、楽にならないようにできているということか。

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