歳時記

「居直り」の時代

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スマホを使用した大学入学共通テストの流出問題は、女子大生が出頭して一応の解決をみた。

ただ、泣きながら母親に電話で打ち明けたそうで、これが気になる。
いまの時代、泣きながら反省したのでは、SNSという世間に叩かれるだろう。

元都議で無免許運転の木下某女も、ペコペコ頭を下げるから、記者たちから攻撃的に突っこまれる。
反対に、ガース総理のときもそうだし、聞く耳を持つ現総理もそうだが、ツッコミを入れるとき、記者諸兄の口調は丁重ではないか。

『水に落ちた犬は叩け』
とは、「池に落ちて弱っている犬に、追い打ちをかけて叩く」という意味だが、強い者には弱く、弱い者には強いのがいまの社会風潮である。

もし、スマホ流出の彼女が、
「ちょっと試してみたのよ。試験の監督方法に問題あるんじゃない?」
笑顔で問題提起すればどうか。

当初は批難囂々だろうが、炎上商法と同じで、必ず真逆の意見が台頭する。

「ホンマやで」
「これまでも試験問題は流出してたんとちゃうか」
「おもろいな、あの子」

擁護の声があがり、ワイドショーなど絶好のネタとばかり彼女を取りあげるだろう。
一躍、時の人である。

元都議の木下某女も、カンロカラカラと居直って笑い飛ばしていれば、炎上商法と同じで必ず真逆の意見が台頭する。

「たいした女だ」
「あのメンタル、見習うべし」

ついでに『都議の闇』といった暴露本でも書けば、メディアで引っ張りだこだろう。

価値観の多様化を是とするいまの時代は、失敗はみずから認めて頭を下げた時点で負けとなってしまうが、
「あたしのどこが悪いのよ」
堂々と構え、あれやこれやの価値観を総動員して居直れば、
「それも一理ある」
という声が起こるのだ。

コロナのワクチン接種だって、「打たない権利」を主張すれば、
「それも一理ある」
と擁護され、メディアに登場するコメンテーターも、
「ま、強制するのは人権上、問題がありますが、打ったほうがいいですねぇ」
と、すこぶるハギレが悪い。

価値観の多様化という「異なる価値観」が大手を振って通用する時代にあっては、「居直り」は世間を渡っていくうえで強力な武器になるだろう。

反社というヤクザの方々が得意とするように、100パーセント自分に非があっても、「異なる視点」でひっくり返す技術である。

「地球は丸い」
「なに言うてんねん。地べたは平らになっとるやないか」
「それでも地球は丸い」
「おたく、どこに眼ぇつけとんのや。見てみい、平らやないか」

突っ張ればいい。

それでも「地球は丸い」と相手が引き下がらなければ、視点を変え、
「丸かったらどないや言うねん。地球とお宅と何か関係あんのか?」
「いや、特には・・・・」
「なら黙っとらんかい」

そういう時代なのである。

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