歳時記

主婦の外出

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 今朝はセミがあまり鳴いていない。
 その代わり(というわけでは、もちろんないのだが)、田んぼの畦道に咲く露草の可憐な青い花がずいぶんと目についた。
 名も知らぬ小さな虫が、ごそごそと動いている。
 サギの白い身体が、田んぼの緑に映えてきれいだ。
 山川草木悉有仏性と仏教で習ったが、都会にいては、このことは実感として理解はできないだろう。
 早朝散歩は、いろんな気づきがある。
 帰宅して、今朝はセミがあまり鳴いていないという話を愚妻にすると、
「セミも疲れてるんじゃないの」
 ニコリともしないで言って、
「ちょっと、早く風呂に入ってよ。洗濯して出かけるんだから」
 そして、
「この忙しいときに、わざわざ歩かなくてもいいのに」
 ブツクサ言っている。
 愚妻は所用で数日、留守にするのだ。
 ウォーキング用の服、着替え、外出用の服とズボン、パジャマ、ハンカチ、コーヒー、お茶、紅茶、ヨーグルトの用意など、留守の間の準備が大変だと苛立っている。
「水道の蛇口は左で、浄水器は右よ」
 キッチンの説明をする。
「どうやって水を出すんだ?」
「こうやって、レバーを横に押せばいいの」
「浄水器は?」
「上に押すの」
「なぜ水道が横で、浄水器は上なのだ?」
「そんなこと、私が知るわけないでしょ!」
 とうとう怒ってしまった。
 主婦の外出は大変なのだ。

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