歳時記

昼夜の区別

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 朝早く道場の仕事部屋に出かけたが、何となく眠く、家に帰って仮眠を取る。
 昼前に起き、午後から自宅で原稿を書き始め、ふと壁の時計に目をやると3時を指している。
(ありゃ、電池が切れて時計が止まっている)
 そう思って階下に降りると、ここの壁時計も3時。
「どうかしたの?」
 テレビを観ていた愚妻が、顔をねじって問う。
「いまは、まだ午後なのか?」
「なに言ってるの?」
「てっきり夜中かと思っていたのだ」
「バカみたい」
 忙しくて、昼夜の区別がつかなくなった私のことを心配するのではなく、「バカみたい」と一笑に付したのだ。
「おまえは、愛情のカケラもないのか」
 咎(とが)めると、
「じゃ、〝頭かおかしくなったの?〟と言えばいいの?」
「バカ者。そういう発想をすること自体を〝愛情のカケラもない〟と言うのだ」
 さらに叱責すると、
「うるさいわね。いまテレビがいいところなんだから、さっさと二階に上がって仕事しなさいよ」
「腹が減った」
「今日は断食日でしょ」
『人の一生は、重荷を負うて、遠き道を行くがごとし』
 徳川家康はいいことを言うではないか。

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