酷暑だ。
法衣は暑い。
だが、色は黒でも、紗(しゃ)の着物のようにスケスケなので、一見して涼しそうに見える。
だから法務に行った先で、
「涼しくていいですね」
と、よく言われる。
「冗談じゃない」
とは、もちろん言わないが、ちっとも涼しくない。
下着に半襦袢とステテコ、その上に白衣、そして法衣を着るのだ。
そのことを説明し、
「だから涼しいのは見かけだけで、内情は暑くて暑くて倒れそうですわ」
と言ってから、
「ま、法衣に限らず、何事も内実は見かけとは違うんでしょうな」
坊主らしい一言をつけ加えたりするのだ。
だが、そうは言っても、納骨法要など墓前のお勤めの場合、熱中症は用心しなければならない。
「おい、どうしたらいいか?」
愚妻に問う。
「ハンディファンは?」
「バカ者。女子高生じゃあるまいし、そんなもの持ってお経が唱えられるか」
「じゃ、クールファンのベストはどう?」
「わしは作業員か」
「しょうがないから、水筒を用意して、ちょこちょこお水を飲むのね」
「トイレが近くなる」
「じゃ、塩アメ」
「バカ者。高血圧で減塩しているのに、塩アメをなめてどうする」
墓前の対策は思いつかず。
そんなこんなで、私としては参列者の健康のことも考え、お勤めは短めがいいと思うのだが、
「みなさん暑いでしょうから、お経は三分で終わりましょう」
と言うわけにもいかない。
さりとて懇(ねんご)ろすぎると、我が身と参列者の熱中症が心配だ。
短くなく、長くもなく。
お釈迦さんの言う「中道の精神」で墓前のお勤めに臨む。
参列の方々が知らないところで、坊主も今年の酷暑に頭を悩ませているのだ。