歳時記

財布を忘れる

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 成田のホテルの部屋金庫に、財布を忘れた。
 金庫にしまうのも、取り出すのも愚妻の役目である。
 愚妻のドジである。
 しかし、愚妻は自分の財布はきっちり持っている。
 私のだけ忘れたということだ。
 これは何を意味するのか考えようとしたが、面倒なのでやめた。
 帰宅した翌日、マッサージに行こうとして、財布がないことに気がついた。
 愚妻にホテルに電話させて取りに行ったが、カッコ悪いので、私は玄関前に停めたクルマのなかにいて、愚妻にフロントに行かせた。
 愚妻が財布を手にクルマにもどってくる。
「中身を確認してくださいって言ってるわよ」
 確認と言われても、財布の中にいくら入っているのか、どんなカードが入っているのか記憶にない。
「記憶にないものをどうやって確認すればいいのか、フロントへ行って聞いてこい」
 と言ったら、
「そんなバカなこと言えるわけないでしょ!」
 怒っていた。
 ま、それもそうだ。
 しかし、温泉もよかったし、バイキングも品数が多く、うまかった。
 値段も安い。
 四十分もあれば行ける。
 また行ってみるか。
 加齢とともに近場がよくなるのだ。

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