歳時記

「食中毒」と「ガッツポーズ」

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 神戸のホテル内にある『なだ万』が、コース料理で食中毒を起こし、3日間の営業停止になった。
『なだ万』といえば周知の高級和食店だ。
 その『なだ万』の食中毒を、どう見るか。
「『なだ万』ですらそうなんだから、そこいらの店が食中毒を起こして当たり前だ」
 と考えるか、
「あってはならないこと。『なだ万』よ恥を知れ!」
 と考えるか。
 前者の考え方は、「高級料理店」という評価に対して、
「まっ、そうは評価されているけどさ」
 と〝醒(さ)めた目〟で見ており、後者は、
「なんたって日本を代表する和食店だ」
 と賛辞の目で見ている。
 醒めた目で見れば、
「食中毒はあってはならないことけが、たまにはミスることだってあるさ」
 ということになり、この「まっ、いいじゃん」という〝なあなあの見方〟はやがて、高級和食店の地位そのものを落としていくことになるだろう。
 賛辞の目で見ている人は当然、
「『なだ万』よ、二度とこのようなことがないように猛省せよ」
 と怒り、この怒りをして、高級料理店を高級たらしめていくことだろう。
 私たちにとっては、どっちでもいいことだが、店にとっては死活問題になるのだ。
 今場所、大相撲で優勝した朝青龍のガッツポーズが横綱審議委員会で問題になっている。
 批判の急先鋒は内館牧子委員で、
「朝青龍はいつも反省している。狼少年だ。心が充実せず、技も磨かれず、けいこ不足で体がぷよぷよ。優勝はまぐれだ。心技体を鍛えて出直していらっしゃい」
 これに対して、鶴田卓彦委員長は、
「あの程度はいい。個人的に違和感はない。国民もそう思っているのではないか。あの体力と精神力があれば、まだまだ頑張れる」
 と擁護した。
 横綱を、上記の「高級料理店」に置き換えればどうなるか。
「まっ、いいじゃん」
 と発言した鶴田委員長は、ご本人も気づいていないだろうが、相撲を醒めた目で見ていることになる。
 反対に内館委員は、相撲を心から愛しているのだ。
 だから怒るのである。
 委員長からして「まっ、いいじゃん」ということは、もはや横綱は品格を求められないということの証明と言っていいだろう。
 勝てばいい、儲かればいい、という〝格差社会〟の現状において、「精神性」を求めてこそ、大相撲は本当の意味で人気を得るだろうに、委員長のノーテンキな発言を聞くと、大相撲の凋落は当然ということか。
 私たちも同様で、批判精神を失い、
「まっ、いいじゃん」
 と〝許容〟する比率が高くなってきたら、それだけ人生に醒めてきたということになるのだ。

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