歳時記

日雇い派遣問題を考える

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 周知のように、日雇い派遣の劣悪な労働条件が社会問題になっている。
 安い賃金、いつ仕事を切られるかわからない不安、機械の歯車のように扱われる労働環境……。
 麻生総理は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)でリーダーシップを発揮したと自画自賛しているようだが、経済大国である日本の〝富〟は、いったいどこに在るのだろうか。
 日雇い派遣という社会問題を考えれば、「経済大国」であることと「国民の幸福」は同じでないことに気がつくだろう。
 だが一方で、ついこの間まで、
「フリーターや派遣こそ、自由な生き方である」
 とした若者意識はなかったろうか。
「きちんと就職したほうがいいぞ」
「いやっスよ」
「なんで」
「会社に縛られるから」
 会社や職場の人間関係に縛られるより、フリーターとして気楽に働いたほうがいい、という価値観である。
「フリーターと言えば聞こえがいいが、不安定で、大変だぞ」
 かつてフリーライターをやっていた私が言うのもヘンだが、フリーという不安定な生活を知るだけに、老婆心ながら忠告すると、
「大丈夫っスよ。いまの時代、何やっても食っていけますから」
 私が保護司として担当した若者はそう言って笑った。
 なるほど経済成長の時代はフリーターもよかった。
 時給の高い仕事を探してどんどん移っていく。
 派遣会社もそれにつれて伸びていき、ここに企業が〝雇用の安全弁〟として目をつけるのは当然だったろう。
 派遣ブームが起こる。
 「スキルを磨いてステップアップ」と派遣会社があおり、企業の思惑と相まって、派遣が労働現場を支えるシステムができあがった。
 そして、このたびの経済危機で、企業は予定どおり派遣労働者を切っていったのである。
「大丈夫っスよ。いまの時代、何やっても食っていけますから」
 若者が言った言葉を、私は思い浮かべる。
 楽観は人生の〝潤滑油〟のようなもので、生きていくうえに不可欠なものだ。
 だが、根拠のない楽観は、往々にして裏切られるものだ。
 緻密な計画を立て、それに向けて努力し、結果については「なんとかなるさ」と楽観する。
 これが本当の意味で「楽観」であろう。
 派遣の問題は多くのことを私たちに問いかけている。
 正規社員のリストラも始まった。
「働く」とは「どう生きていくか」という、個々人の人生観にかかわる問題なのである。

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