歳時記

「若者にステテコ」の理不尽を怒る

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「ステテコ」が人気だという。
 オッサンにではない。
 若者に、である。
 男だけではない。
 若い女性も、自分の部屋着に買っているというではないか。
 冗談じゃない。
 ステテコはオッサンになった証拠だと、私が若いころはバカにされたのだ。
 だから真夏、ズボンが汗で脚にまつわりつこうとも、ステテコは断固拒否した。
 冬場、寒さにガタガタ脚を震わせようとも、ステテコもパッチも穿かなかった。
 下半身だけではない。
 上半身は下着をつけず、じかにワイシャツを着た。
 ワイシャツからランニングが透けて見えるのはオッサンの証拠であったからだ。
 だからワイシャツの素材にも、仕立てにも大いに凝ったものだった。
 ところが四十を過ぎ、五十を迎え、私は〝清水の舞台〟から飛び降りるつもりで、ステテコを穿き、ワイシャツの下にシャツを着て、
(もう若くはないのだ)
 と自分に言い聞かせた。
「幸福の黄色いハンカチ」ならぬ「降伏の白旗」であった。
 それが、どうだ。
 いまになって、若者たちにステテコが人気だというのだ。
 ステテコはオッサンの穿くものだとして軽蔑した〝世間〟は、いったい何だったのだ。
 私は何のためにヤセ我慢をしてきたのだ
 私の腹立たしさがわかるだろうか。
 人生は無常というけれど、まさかステテコが若者に人気の時代が来ようとは、私は夢にも思わなかったのである。

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