歳時記

「マック」で声をかけられる

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今日のご葬儀は9時45分の開式なので、私の葬儀場入りは8時45分だ。
例によって早めに家を出て、式場近くのマクドナルドで時間調整する。

思いつくままスマホに本の構成を打ち込んでいると、
「失礼ですが、お坊さんですか?」

いきなり声をかけられた。

年配の男性二人が立っている。
店を出ようとして足をとめたようだ。

「はい、そうですが」
こたえると、もう一人が、
「以前、この店でお見かけしましたね」

ニッコリ笑顔で言われ、ドキリ。
悪いことをしているわけではないが、こう言われると、やっぱりドキリである。

法衣が目立つのがイヤで和装のコートを着たまま着席しているのだが、頭隠してなんとなら。
コートの下の法衣は見えるだろう。

「実はそこの式場に行くのですが、少し早いので、ここで時間調整をしているんです」
笑顔を返しながら言うと、
「それはご苦労さまです」
お二人に丁重に頭を下げられた次第。

考えてみれば、私のことを悪しざまに言うのは愚妻だけではないか。

この話はぜひ愚妻にしなければと、葬儀をすませ、帰宅してすぐに告げると、
「誰だって、ご苦労さまくらいは言うでしょう」

嫌味を言ってから、
「どこで見られているかわからないんだから気をつけてよ」
ピシャリとクギを刺されてしまった。

マックで声をかけてくださったお二人は、まさか私が愚妻にそんなことを言われていようなど、思いもしないだろう。
人はハタから見ただけでは内実はわからないのだ

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