ヤオフクに、本願寺派の五条袈裟が出品されていた。
友人のメールで知った。
こんなものを出品するとは、何ともバチ当たりな気がしないでもないが、見ると、なかなかグッドなのである。
最終的にいくらで落札されたか知らないが、私が見たときは5万円が最高値になっていたので、おそらく8万円くらいまで競るのではないかと思われた。
欲しくなった。
「おい、どうだ、この五条袈裟は」
愚妻に画像を見せて反応をうかがうと、
「持ってるじゃないの」
即刻、却下。
「いまの五条だって、付けていくことないでしょ」
嫌味まで言う。
「何てことを言う!」
と怒るようでは未熟。
ここは怒りをぐっと抑えて、
「なるほど、おまえの言うとおりだ。どうせ買うなら日常的に使うものがいいよな」
さりげなく〝差し水〟をするのだ。
「それがいいに決まっているじゃないの」
と、愚妻が得意そうに鼻をうごめかせたところで、
「実はこれなんだが」
先日、送ってもらった野袴(のばかま)の生地を見本を見せて、
「これなら日常的に使うから、五条よりいいんじゃないか」
ジワリと攻めていく。
五条袈裟と野袴は本来、比較の対象にならないものだが、あえて比較させ、すり替える。
これが「比較点のレトリック」という心理術なのだ。
「そりゃ、五条より野袴がいいに決まってるじゃないの」
トントン拍子に話は決まり、
「じゃ、オーダーするから採寸してくれよ」
かくして五条袈裟は、なぜか野袴に取って替わったのである。
「五条袈裟」転じて「野袴」に
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