人生は「突然変異」でしか変わらない。
だから病気などアクシデントは厭(いと)うべきでなく、人生が変わっていくチャンスだととらえるべきだ。
先程、稽古のあとで一般会員に、そんな話した。
だからだろう。
帰宅して風呂に浸かっていると、
(私の肩甲骨の痛みは、ひょっとして生き方を変えるチャンスなのではないか?)
そんな思いががよぎった。
そうだ。
そうに違いない。
無理をするなという「仏の啓示」なのだ。
すぐさま風呂からあがり、愚妻に言った。
「おい、わしはこれから気楽に生きることにしたぞ」
「ちょっと、それ以上お気楽に生きてどうするのよ!」
「えっ?」
「えも、へもない!」
いや、怒るまいことか。
「バカなこと言ってないで、ちゃんと拭きなさいよ。身体が濡れてるでしょう。梅雨入りしたんだから湿気させないでよ」
あれやこれやと怒り始めた。
私には、自分が気楽に生きているという自覚はないのだが、愚妻にはそう見えるのだろう。
『おもてには快楽けらくをよそい、心には悩みわずらう。――ダンテ・アリギエリ』
太宰治『渡り鳥』の書き出しが脳裡をよぎるのだ。