歳時記

「眉ツバの人生」からの解放

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粗大ゴミが、また出てきた。
でかい置物である。

何の木で彫ってあるのか忘れたが、長いこと自宅に保管していた。
それも2つである。
これを捨てることにしたのだ。

かれこれ20年以上になると思うが、知人に広島で会った折り、東南アジアの民芸品を輸入している人を紹介され、その人が販路を求めて送ってきたサンプルである。

卸値が当時で20万円。
「いくらで売ってくれてもかまわない」
と言う。
それだけの価値があるのかどうか知らない。
眉ツバだろう。

当時、バブルが弾けて、怪しげなモノがずいぶん出回っていた。
ダイヤ巻で2千万円の腕時計を百万円で売ってくれなんて話しもあって、気持ちがグラリと動いたこともあった。

20万円のクロコの長財布を売ってくれるよう頼まれ、カッコよかったので、これは私が5万円で買ったり。

そういう時代に持ち込まれた東南アジアの置物である。

だが、そんなものを買う酔狂な人はいない。
モノは私の手許にある。
送り返すのが面倒なので、当時、何万円か払って私が引き取った。

「勝手に送ってきたものなんでしょ!」
愚妻は当然、ブーブー怒る。

だから私は言った。
「バカ者。これは超値打ちもなのだ」

かくして、1つは仏間に置き、もう1つは梱包して物置に放り込んでおいた。
「超値打ちもの」と言った手前、捨てるに捨てられないで20余年たったというわけである。

それを今回、捨てることにした。

「超値打ちものではあるが、コロナで世の中の価値観が変わったいま、お金をつけても引き取る人はいまい」
そう言った。
何事もコロナを持ち出せば、愚妻はすぐに納得するのだ。

かくして、粗大ゴミなったという次第。
捨てに行くのは面倒ではあるが、「眉ツバの置物」を捨てることで、私は古希にしてやっとこさ「眉ツバの人生」から解放されるような気がして、実に爽快なのである。

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