歳時記

スボンを買う

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 外出するときは作務衣か着物、家にいるときはスエット。
 スーツもマオカラーを着るので、ネクタイを締めるのは空手の試合のときくらいだ。
 で、この夏、スラックスを買った。
 といっても、私は買いには行かない。
 洋服はブランドが決まっているので、愚妻がスラックスを持ってデパートに行き、
「サイズもデザインも裾丈も、これと同じのをください」
 と言えば、それですむ。
 で、来週、必要があってジャケットを着ることになった。
 気になって、愚妻にスボンを用意させると、何と夏に買ったスボンではないか。
「バカもの。生地が透けているではないか」
「スボン下を穿けば寒くないんじゃないの?」
「そういう問題ではない」
 すぐに夏物のスボンを持たせ、
「行け!」
 デパートへ走らせた。
 帰宅してブーブー文句を言うかと思ったら、違った。
「聞いてよ、冬物が2割引きだったのよ」
 上機嫌なのである。
 これは女の愚かしさか、それても現実主義なのか。
 2割引きであったということだけで、得意顔で喜んでいる。
「そうか、でかした!」
 私も、すかさずヨイショする。
 凧と女は、高く高く舞い上がらせるのだ。

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