歳時記

今年も暮れゆく

投稿日:

 毎日のように外出している。
 たいてい飲食である。
「よく出かけるわね。忙しいんじゃないの?」
 愚妻がイヤ味を言う。
「忙しくても、男には出かけなくてはならない用事があるのだ」
 と、諭(さと)すが、何とやらに念仏で、聞く耳は持たない。
 当面の執筆のほか、読んでおかなければならない資料本が山とあるし、個人的に読んでみたい本もたくさんある。
 DVDも観たい。
 私は喜劇が大好きなのだ。
 奮発して再生機を買ったが、あれから何ヶ月が経つか。
 まだ、一度も再生したことがない。
 道場の2軒隣がTSUTAYA。
 レンタルしてガンガン楽しもうと思いつつ、会員にもなっていないどころか、店内に入ったこともない。
「そう言えば、ギターを全然、弾かないわね」
 愚妻が思い出したようにイヤ味を続ける。
「ボケ防止に買ったのだ。いまのところ、ボケそうもないから弾かないでいるに過ぎない」
 と、諭したが、むろん聞く耳は持たず、無礼者が鼻で笑っていた。
 机の前の年間カレンダーを見やる。
 1年間という日数は、たったこれだけしかないのか。
 今年も忙殺のなかで暮れていく。
 年の瀬になると、毎年、同じ思いに駆られるのだ。

-歳時記

Copyright© 日日是耕日 , 2024 All Rights Reserved.