歳時記

小泉首相の靖国参拝に思う

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 小泉首相が今朝、靖国神社に参拝した。
 賛否をめぐって論議が再燃しているが、靖国問題の是非はひとまず措くとして、私が注目するのは、元自民党幹事長である加藤紘一議員が、テレビで繰り返し発言している言葉だ。
 すなわち、
「小泉さんは、靖国の問題は《心の問題》」とおっしゃっているが、《心の問題》と《政治の問題》とは区別して考えるべきだ」
 という発言である。
 なるほど、加藤議員の言うとおりだろう。《心情》と《政治》は別であり、政治の世界に個人的心情を持ち込むべきではない。
 だが、この当たり前のことを、加藤議員がなぜ繰り返し発言するのだろうか。
 それは、《心の問題》が《政治の問題》よりも、強く国民にアピールすることを熟知しているからではないか。靖国参拝反対派の加藤議員としては、国民が心情的に参拝に納得してしまうことを危惧しているものと、私は見ている。
 だから「心と政治は別ですよ」と、繰り返し国民にクギを刺しているのだろう。
 靖国問題は一例として、人間は、よくも悪くも感情で動くのだ。
「確かにおっしゃる通りだ。しかし、私はどうしても好きになれないのだ」
 ということが、よくある。
 理屈で正しいことと、納得とは別ものなのだ。
 すなわち、《理屈》でなく、最後は《感情》で態度を決する――これが人間なのだ。
 むろん、感情や、情緒的な気分に流されることの危険性はじゅうぶん承知している。だが、承知してなお、人間は感情の生き物であり、《感情》が《理屈》を超えるということを忘れてはなるまい。
 この人間心理を知らずして、《理屈》で人を説き伏せようとするのは愚かなことだ。《理屈》として正しければ「正義」だと思い込むのは滑稽なことだ。
 靖国参拝反対派の意見を聞いていて、私はつくづくそう思うのである。
 

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