歳時記

木彫りの置物

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 自室に、木彫りの置物が2つある。
「四神風水」と、箱の上に手書きしてある。
 大きくて邪魔になるため、自室に梱包して置いてある。
 お陰で、和箪笥の引き出しを開けるときに邪魔になる。
 それで、一つ、仏間に移動した。
 仏間には、すでに別の木彫りが置いてある。
 なぜ、そんなものが3つもあるかというと、十年ほど前、広島でアジアの民芸品を輸入している社長さんがサンプルで送ってきたのだ。
 社長の名前は忘れた。
 所用で広島に行った折り、知人の紹介の紹介で会い、
「東京で売ってくれませんか」
 と頼まれ、
「いいですよ」
 とリップサービスしたら、ホントに送ってきたのである。
 でっかい3つの梱包を前に、
「こんなもの、どうするのよ」
 愚妻が文句を言ったものだ。
 そこで私が、
「バカ者。一つが何十万円もするものだ」
 でまかせを言って一喝すると、
「エッ!」
 にわかに目の色が変わった。
 現金なものだ。
 それ以来、わが家に置いてある。
「そのうち、買い手がつくだろう」
 と、ごまかして十年が過ぎた。
 社長さんは音信不通。
 いまさら「あれは二束三文なのだ」とは口が裂けても言えず、やむなく仏間に移動した次第。
「おっ、いいねぇ」
 置物を眺めつつ、私は感嘆してみせるのだが、愚妻は何となくシラケているような気がする。
 女の直感はヤバイのだ。

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