歳時記

胃潰瘍の薬

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 胃の痛みが治まらないので、昨日、かかりつけの医者へ行った。
「薬、飲んでも痛いですか?」
 医者が首を傾げながら言う。
「ええ、痛いです」
「ウーム。じゃ、薬を変えましょう。こっちはよく効きますよ」
「じゃ、最初からよく効く薬を出せばいいじゃないか」
 とは、もちろん言わない。
 で、愚妻に処方箋を渡して、薬をもらってこさせ、これまでどおり、ナイロン袋に仕分けさせる。
 高血圧の薬、痛風予防の薬、それにアレルギー性鼻炎の薬と盛りだくさんなので、きちんと仕分けしておかなければ頭がこんがらがってくるのだ。
 ところが、仕分けを終えた愚妻が、アッケラカンと言う。
「あら、こんなところに胃潰瘍のクスリがあるわ」
 何と、愚妻は仕分け袋に入れ忘れていたのである。
 つまり、私は暮れから胃潰瘍のクスリを飲んでいなかったのである。
 痛いはずだ。
 医者が「薬を飲んでも痛いですか?」と首を傾げるはずだ。
「バカ者! 入れ忘れるとは何事だ!」
 叱責すると、
「自分で気がつかないの」
 居直る。
「何種類も飲んでおるのだ。気がつくわけがないだろう」
「だって、あなたの胃でしょ」
 例によって、論戦はドローに持ち込まれたのである。
 新たに処方された薬は、これまでのやつより強いやつだと、薬局のオッサンが言ったそうだ。
 これまでの弱い薬を飲むか、新たな強い薬を飲むか。
 愚妻の手抜きのお陰で、新年早々、私は悩む。
 胃が悪くなるのも道理ではないか。 

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