歳時記

今日は私の誕生日

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 うっかりしていたが、今日は私の誕生日ではないか。
 娘がバースデーケーキを道場へ持ってきてくれて、ハタと気がついたのである。
 61歳。
 還暦以降は「余生」と決めていたが、その余生も、はや一年が過ぎたことになる。
 来年も光陰は矢のごとく過ぎていって、やがて人生を終えるのだろう。
 だが、人生の終わり方は3パターンしかない。
 心臓マヒのようにコロリと逝(い)くか、事故で逝くか、病気で長患いのすえに逝くか。
 コロリは本人は楽だろうが、すべてをやりっ放しにして逝くのだから、残った者は残務整理に大変である。
 事故で逝くのは加害者がいるわけで、これはこれで相手に気の毒である。
 長患いは家族に迷惑をかけるので、これもマズイ。
 となれば、ハッピーな逝き方はないということになる。
 生きるのも楽ではないが、どうやら死ぬのも楽ではなさそうである。
 そんなことを考えながら道場から帰宅して、
「おい、娘がくれたケーキを食べようか」
 愚妻に告げると、
「あら、道場の冷蔵庫に置いてきちゃったわ」
 こともなげに言った。
 これが私の61回目の誕生日なのである。
 

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