〝駄犬マック〟が、今日、退院だそうだ。
膵炎で、2泊3日の入院である。
「駄犬にしては贅沢ではないか」
と言うと、愚妻が怒った。
「何よ、駄犬、駄犬って!」
思慮が浅い女だ。
「いいか、聞け」
と私は、さとした。
「駄犬がいるから賢犬がおるのだ。駄犬がいなければ、賢犬の存在は成り立たない。ゆえに、駄犬は立派なのだ」
頭が混乱したか、愚妻はしばし考えていたが、
「じゃ、あなたのような人間がいるから、世のなかには立派な人がいるというわけね」
今度は、私の頭が混乱したが、すぐに気を取り直して、
「悪妻は百年の不作というけれど、あれは間違いだ。悪妻の存在によって良妻が成り立つ以上、〝悪妻は百年の豊作〟と言うべきだ。ゆえに、我が家は百年も豊作が続くことになる」
「ちょっと!」
愚妻の怒るまいことか。
〝駄犬マック〟の退院で、夫婦の溝はさらに広がっていくのだ。
〝駄犬〟の退院と「夫婦の溝」
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