ネットで調べごとをしていて、ひょいと『あざみの歌』に出くわした。
ご存じのように、哀愁を帯びた素敵な歌詞である。
「山には山の 憂(うれ)いあり」
という冒頭の歌詞を眺めていて、ふと思った。
(あの、泰然自若とした山ですら憂いがあるのだから、なるほど人間は死ぬまで悩みから解放されるわけがない)
これを浄土真宗的な言い方をすれば、
「あんた、あの立派な山かて煩悩に苦しんどるんやで。まして、あんたのような凡夫が煩悩に苛(さいな)まれるのは当たり前やがな」
そして、
「そんなあんたが阿弥陀様によって、煩悩を断ずることのないまま救われていくんや」
ありがたいこっちゃ、ということになる。
そんなことを考えているうちに、この歌を作詩した「横井弘」に興味がわいてきて、調べてみると、仲宗根美樹が歌って大ヒットした『川は流れる』の作詞者でもあった。
この歌も、一定以上の年齢の方にはよく知られ、
「病葉(わくらば)を今日も浮かべて 川は流れる」
と、歌詞は始まる。
病葉を「煩悩に苛まれる私たち」、川を「人生」と読み解けば、これも浄土真宗的な雰囲気を感じるのである。
そう言えば、駆け出しの週刊誌記者当時、あるゴシップがあって仲宗根美樹の自宅マンションに張り込み、彼女に直撃取材して、けんもほろろにあしらわれたことがあった。
三十余年がたった今も、その夜、彼女が真っ黄色のドレスを着て帰宅してきたことをよく覚えている。
こうして振り返ると、人生という川の流れは実感しつつも、私は浄土真宗の僧籍にありながら、自分が「病葉」であるという自覚が希薄なのである。
困ったものだ。
「病葉(わくらば)」と「川の流れ」
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