歳時記

白内障と「井の中の蛙」

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 白内障の手術をしてからというもの、
「よく見える」
「こんなに明るいとは思わなかった」
 と、愚妻がハシャいでいる。
 現金なものだ。
 が、それはそれとして、これは仏法を説くいい機会だと思った私は、
「そうであろう。不幸な境遇を経験して初めて、幸せというものが見えてくる」
 と言いかけると、
「あら、説法ならよそへ行ってしてちょうだい」
 縁なき衆生は度し難いもので、私の言(げん)など、もとより耳を貸すはずがなく、
「あなたも、そろそろ白内障の検査をしたほうがいいかもよ」
 鼻歌まじりで言うのである。
 私は風邪でも引いたか、今朝は体調不良で起き上がるのがやっと。
 それでも愚妻のためにと力をふりしぼり、〝ありがたい話〟を聞かせようとしたのに、まったく罰当たりなことではないか。
 しかし、「こんなに明るいとは思わなかった」という言葉には、いろいろ考えさせられた。
 いま見えている現実よりも、違う現実に気づくのと同じで、これは果たしていいことなのだろうか。
 もっと言えば、現状に満足していた「井の中の蛙(かわず)」が、大海の存在を知ることはハッピーなことなのだろうか。
 答えは簡単そうで、実はなかなか難しいのである。
 

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