私は方向音痴だ。
というか、道順や場所を覚えることに、まったく関心がないのである。
一昨日、今日と、保護司の仕事で二軒の家庭訪問をしたが、両方とも一年前に往訪した家なので、
(行きゃ、わかる)
と気軽に出かけたが、これがさっぱりわからず、迷いに迷って、やっとこさたどりついた。
で、午後。
愚妻と東京駅で所用をすませ、メシでも食べようということになった。
「うまい中華屋があるから、そこへ行こう」
と、丸ビルに連れて行ったが、目当ての店が見つからないのである。
愚妻の非難を恐れた私は、
「しばらく来ないうちに、様変わりしたようだ」
とか何とか言ってごまかし、トンカツ屋に入った。
店を出て、
「でっかい本屋があったのに、どうしたのかな」
私がつぶやくと、
「それって、たしかオアゾって言わなかった?」
愚妻が足を止めて言った。
私は丸ビルと、丸の内オアゾとごっちゃにしていたのである。
「いつもこうなんだから」
と非難する愚妻に私は言った。
「バカ者。人生の道を間違えさえしなければ、あとの道はいくら間違ってもいいのだ」
「なに言ってるの。あなたは人生の道を間違えてばっかりじゃないの」
胸にグサリのひと言であった。
私は方向音痴である
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