歳時記

「悪名は無名に勝る」という生き方

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 大阪府知事選挙は、周知のとおり、橋下徹氏が圧勝した。
 各メディアとも、勝因は「知名度」であるとする。
 橋下氏の知名度については、選挙期間中からさんざん言われてきたことで、下馬評も「圧倒的な知名度」をもって有利とした。
(そうだろうな)
 と、私も思っていたし、選挙結果についても順当だと思うが、ふと気になった。
(知名度があれば、なんで選挙に勝つんだ?)
 妙な話ではないか。
 今回の府知事選だけでなく、国政選挙もそうだ。
 で、あれこれ考えているうちに、唐突に「類似性の動機づけ」という言葉が頭をよぎった。
 誰も経験あることだと思うが、たとえば郷里や出身校が同じだというだけで、初対面の人と急に打ち解けたりすることがある。赤の他人の一人に過ぎないはずなのに、同郷や同窓という〝共通項〟によって何となく親近感を覚えるのだ。
 これが「類似性の動機づけ」だ。
 拙著『ホストの出世術』に書いたが、「類似性の動機づけ」はホストが得意とするテクニックで、客との共通項を探り、そこを攻めることで、客との親近感を強めるのだ。
「有名人」も同じだ。
「あっ、あの人、テレビで見て知ってるでぇ」
 この心理が、たぶん「類似性の動機づけ」ではないかと、私は考えたのである。
 で、さらに考えた。
 私たちもまた、
「あの人、知ってるでぇ」
 と思われれば、人生、有利に働くのではないか。
《悪名は無名に勝る》
 という言葉があるが、「善良な無名人」と「ワルの有名人」とでは、後者のほうが圧倒的に人生にプラスするのだ。
 たとえば、私の友人である影野臣直クンは、〝ボッタクリの元祖〟として知られる「有名人」だ。
《梅酒一杯15万円》事件で、4年間の獄中生活を経験しているが、出所後の活躍はめざましく、『歌舞伎町ネゴシエーター』『刑務所(ムショ)でなくヤツ、笑うヤツ』(いずれも河出書房新社)などの執筆の他、雑誌の連載から劇画、DVDまで八面六臂の活躍である。
 橋下新知事から影野クンまで、ことほどさように有名であることは「善」なのだ。
 ならば、世間体など気にしないで、ガンガンやって名前を売ればいい。
 スキルがなければ、良くも悪くも名を売りたまえ。
「ほう、あなたが○○さんですか」
 こう言われるようになったら、しめたもの。
 人生はさらに開けていくのだ。
 悪名でも結構。
 名を売った後で、軌道修正すればいいのだ。
 あざとい生き方ではあるが、これまもた人間関係における一面の真理なのである。
 大阪府知事選で、そんなことを考えた次第。

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