歳時記

女将の話に、ハタと膝を打つ

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 昨夕、馴染みの鮨屋へ顔を出した。
 馴染みと言っても、クルマで30分以上かかるので、時間があるときでなければ行けない。原稿が溜まっていて、ノンキに鮨屋どころではないのだが、昨日は午前中に畑へ行き、午後から保護司の仕事で家庭訪問をしたりで、とても執筆できる気分ではなく、
(おっ、そうだ)
 と思い立ち、女房と出かけた次第。
 で、鮨屋。
 女将さんが、おもしろい話をしてくれた。
 たとえば、百人前の鮨を頼まれるとする。
 準備をし、手順を整え、握り始めたところへ別口から2人前の出前注文が入る。
 断るのも悪いし、2人前くらいならどうってことないと思って、注文を受けると、
「さあ、これが大変。手順が狂って大混乱になるんです。100人分を握るんだから、たかが2人分の追加なんて、どうってことないと思うでしょうが、そうじゃないんですね」
 と、経験談を話してくれた。
 これに、私はハタと膝を打って、
「いまの話、よく覚えておけ」
 と女房に命じた。
 と言うのも、私が原稿を書いているときに、
「晩ご飯、どうするの?」
 ノー天気に声をかけてくるのだ。
「いま原稿書いてるから、あとにしろ」
「なによ、返事くらいしたっていいじゃない」
「うるさい!」
 ここで思考が中断。再びエンジンがかかるまで時間を要することになる。
「わかったろう? いま、女将さんが言ったのと同じで、たかが数秒であっても〝割り込み〟があると手順が狂って……」
「冷酒のお代わり、お願いします!」
 女房の思考回路に割って入る隙は、ないのだ。
 
 

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