歳時記

親父とヘルメット

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 昨日の日曜日は、佐倉市空手道大会があった。
 参加選手数は幼児から一般まで千葉県下から570名。審判員50名、補助役員50余名という大きな大会で、9コートで熱戦が繰り広げられた。
 と言っても、私はただ本部席に座って、教育長や体協会長、来賓の方々と世間話をするだけ。佐倉市空連は理事長以下、優秀な人材がそろっているので、私のような役立たずは、接客していればいいというわけである。
 それでも、ただ座っているのも疲れるのである。
 大会のあと健康ランドへ行って湯船で手足を伸ばし、夜はぐっすり寝たのはいいが、朝、寝過ごすところであった。
「おーい、行かんのか!」
 階下から親父が呼ぶ声で飛び起きたという次第。
 今朝は、野菜に防虫ネットをかぶせるのだ。先日、オヤジが得意になって防虫ネットを買ってきたので、それをかぶせたのだが、
「あれは夏用じった」
 と親父。
「今度はええぞ、冬用じゃけん、保温もええんじゃ」
 また得意になっているので、今朝、畑に行く約束をしていたのである。
 で、出かける間際、親父の部屋を何気なくのぞくと、テーブルの上に白いヘルメットが置いてある。
「なんだ、それ?」
 私がきくと、親父はニヤリと笑って、
「地震が来たときのヘルメット。夜、ここに置いて寝とるんじゃ」
「フーン」
 手にとって見て驚いた。
「なんじゃ、これは。花を植える鉢じゃないか」
 プラスチックの鉢をヘルメットに改造したものだったのである。
「ないよりはええじゃろ」
 親父は得意になっているが、もし地震が起こって、家の崩れたガレキの下から、プラスチックの鉢をかぶった年寄りが見つかったら、世間はどう思うだろう。
 息子として、親父を粗末にしたようで、カッコ悪いではないか。
 私はすぐカミさんを外に呼んで、小声で言った。
「畑から帰ったら、ヘルメットを買ってこい」
「ヘルメット?」
「いいから買ってこい。ちゃちなのはダメだぞ」
 それで本日、親父にヘルメットをプレゼントした。
 84歳になってなお、地震へのこの備え。
 枯れるどころか、人間、何歳になっても生への執着があるんですな。
(俺もそうなるのだろうか)
 ふと考えさせらた次第。
 

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