歳時記

「比較すること」の無意味

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 最近、「国内移住」がブームだ。
 定年を迎える団塊の世代や、その予備軍にとって、国内移住は、自分の意志による〝新天地〟の選択であることから、「人生を二度生きる」という思いにつながるのだろう。「人生のリセット」と言い換えてもよい。
 私も昨夜、友人たちと食事をしながら、国内移住の話になった。「海派」と「山派」に別れたが、私はどちらにもくみしなかった。
 と言うのも、瀬戸内海で育った私は、これまで大の「海派」で、だからこそ房総鴨川市の海辺に仕事部屋を借りたのだが、昨年秋、過労で一週間ほど内陸部の入院して、考えが変わった。
 仕事部屋から見る海の景色もいいが、病室から見る森の景色もよかった。 すなわち、海も山もそれぞれによさがあり、要は、それぞれのよさを見つけられるかどうか、それぞれのよさを楽しめるかどうか――ここに人生の要諦があるような気がしたのである。
 海と山は一例だが、人生、どんな境遇にあろうとも、他人と比較し、「どっちが幸せか」を考え、一喜一憂するのは無意味なことかもしれない。幸・不幸の分かれ目は、それに気づくかどうか……。
 移住せずとも、いま自分が立っている場所こそ、実は最高の幸せの場所かもしれない。自戒の意味を込めて、そんなことを昨夜は考えた次第である。

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