取材でヤクザに会っていつも感心することだが、彼らの話は面白い。
聞いていて、あきさせない。
話自体の面白さもさることながら、たとえがわかりやすく、実にうまいのだ。
「わしがイモ食うて、あんさん屁ぇこきまんのか?」
「わしが酒飲んで、あんさん酔いまんのか?」
言われてみればもっともで、これに頷くと、
「それといっしょで、人様のことをあれこれ言うたらあかんのですわ」
といっ調子で話しは展開。
前提に「言われてみればもっとも」という刷り込みがあるので、そのあとに続く話につい引きこまれてしまうというわけである。
つまり、話や会話で相手を引きこみ、納得させるには「前提」が勝負ということになる。
前提で腑に落ちて納得させれば、結論で納得させるのはたやすいのだ。
ところが私たちは「結論」で勝負しようとする。
結論を見据えたまま話をするから、相手にしてみれば「我田引水」に聞こえてしまう。
だから、説得できない。
前提に全神経を傾注するのだ。
このところ交渉事が多いからか、今朝、湯船の中でそんな思いがよぎったのである。