歳時記

議論で相手をやりこめる〝噛みつき法〟

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 議論して相手をやりこめる方法は、「共通認識とする価値観」に噛みつくことである。
 たとえば、ライブドアの堀江貴文社長が「近鉄バッファロー」の買収に乗り出したときである。
「ライブドアという無名企業に球団を持たせていいのか」
 といった球団オーナーたちの批判に対して、堀江社長は、
「無名企業が球団を持って、なぜいけないんですか」
 と噛みついた。
 これには、私たちも「なるほど」である。
 無名企業が球団を所有してはいけないという明確な理由があるわけではない。私たちの「共通認識」として、プロ野球球団は、社会的立場を有する企業が持つものと思っていたに過ぎないわけで、そこに対して「なぜ、いけないのか」と噛みつけば、「そりゃ、そうだ」となるのである。
 だが実は、この「噛みつき」は巧妙なレトリックなのだ。
 たとえば、次ぎのような「噛みつき」に対して、あなたは何と答えるだろうか。
「どうして年寄りを大事にしなくちゃいけないんですか? ただ単に年を食っているだけじゃないですか」
「同じ運賃を払っているんですよ。どうしてシルバーシートに座っちゃいけないんですか」
「どうして近隣の人と仲良くしなくちゃならないんですか? 個人の勝手でしょう」
「防犯パトロール? 面倒なこと言わないでくださいよ。やりたい人がやればいいんで、私は関係ないです」
 これらはみな「噛みつき」であり、このあとに、
「それって、法律で決まっているんですか?」
 と居直れば、議論は勝ちとなる。
 これが「共通認識とする価値観」に噛みつくことなのだ。
 議論には勝てるが、イヤな奴ということになる。
 イヤな奴と言われて平然としていられるのは、ツラの皮が厚いか、人も羨む成金だけなのである。
 
   

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