愚妻が明日、娘と孫に誘われてコンサートに行くと言う。
「何のコンサートだ」
「さあ、何かしらね。年配の外国人歌手だとか言ってたような気がするけど」
私は明日は法事、明後日は一日葬だというのに、愚妻は歌手の名前も知らないコンサートに行くという。
いい加減も、ここまでくればたいしたものではないか。
私がネットで調べると、ギルバート・オサリバンのようだ。
「ギルバート・オサリバンではないか?」
「そうそう、なんとかサリバンだと言ってたような気がするわ」
「どんな曲を歌ったのだ」
「そんなこと、私が知るわけないでしょ」
ひどい話である。
帰りに食事してくるそうだ。
「わしは?」
「サンドウィッチでも買っておくからそれを食べればいいでしょ」
ひどい話である。
今日は夕方、歯医者へ行く。
半年に一度の掃除である。
そのことを愚妻に告げると、
「ちょっと、何時の予約なの?」
「5時半だ」
「ああよかった、鉢合わせしなくて。私は3時半の予約だから」
亭主と鉢合わせするのが、そんなにマズイのか。
本心が思わず言わせた言葉だろうが、さしもの私もこれにはいじけるのだ。