歳時記

女のリアリズムに思う

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 房総鴨川市の仕事部屋に来て、カミさんと近くの温泉に日帰り入浴に出かけた。
 いつぞやこのブログでも紹介した曽呂(そろ)温泉だ。山あいに民家のような旅館が1軒あるだけで、入浴客はせいぜい数人といったところ。温泉は茶褐色のコーヒー色。浴槽は狭いが、それでも手足を長々と伸ばすと、風呂好きの私にとってはこの世の天国なのである。
 で、曽呂温泉へ向かう道中のこと。
 あちこちに、深紅の彼岸花が咲いていて、
「ああ、きれいね」
 と、カミさんが運転する私に言った。
「そうだね」
 と返事すればいいものを、
「彼岸花は色彩が強烈で、自己主張が強すぎるな」
 と異を唱えてしまった。
「そうかしら」
 カミさんがちょっと不機嫌になる。
「そうさ。花は、やっぱり雑草の可憐なのがいいね」
 論理の展開上、私がそう言うと、
「それは庭の草を引いたことがない人が言うことよ。庭の雑草を引いてごらんなさい。そんなノンキなこと言ってられないから」
 女は論理を超越して存在するリアリストであることに、このとき改めて気づいた次第。
 それでも、
「畑の草はオレが引いてるじゃないか」
 と反論を試みたが、
「だったら庭の草も引けばいいじゃないの。だいたい、あなたは……」
 私に対する批判は演繹的に展開し、女と議論することがいかに生産性のないものであるか――こう言うとフェミニストの人は怒るだろうが――再認識した次第である。
 来春スタートする離婚時の厚生年金分割制度を前に、社会保険庁が、離婚後の年金額を事前に試算するサービスを本日から始めた。対象は50歳以上で、社会保険事務所に年金手帳や戸籍謄本などを提出して申請すれば、離婚したときの受給額を教えてくれる。
 リアリストの女性に、これからは経済力も備わるのだ。
 熟年離婚は確実に増えるだろう。
 高齢社会の次にくるのは、女性社会ではないか――私は曽呂温泉につかりながら、ふと思った次第である。
 

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