歳時記

好きで間違えるのではない

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一昨日の葬儀会場は火葬場を併設しているため、ホテルのような大きな建物で、何組もの葬儀が行われていた。
僧侶の控室は2階で、式場は1階。

前回のブログで書いたように、
(これはきっと迷うな)
私は思わず唸る。

葬儀のあとが忙しく、控室にもどると急いで衣を着替え、駐車場のクルマに荷物を置いて出棺時間に遅れないよう式場にもどらなければならない。
僧侶が炉前までチンチンと鳴らしながら先導するからだ。

大きな式場になると、当然、往復に時間がかかる。
だから私は控室から式場の順路を確認した。
目印はエスカレータだ。

(エスカレータを上がると右に曲がって・・・・)

これで大丈夫。

ところが、である。

葬儀が終わってエスカレータに向かおうとすると、式場係りの女性が、
「あっ、こちらへどうぞ」

親切にエレベータに案内してくれたである。

まさか、エスカレータを目印にしているとも言えず、彼女にしたがって通路を曲がり、私が乗りこむと彼女は一礼して見送ってくれた。

そして、エレベータを二階で降りる。
私の頭はもうこんがらがっている。
せっかくエスカレータを基準に順路をおぼえていたのにウロウロである。

通りかかった別の女性係員が声をかけてくれなければ迷い子になり、出棺に遅れるところだった。
やれやれである。

私は方向オンチなのか。

御殿場に所用で出かけたときのこと。
御殿場インターから東名高速に乗って走っていると、何だかヘンな感じ。
反対方向の名古屋に向けて走っていた。

こんなことが、ときどきあるのだ。

先日は愚妻を同乗させていて、高速道路わきの片側二車線の一般道を逆走しそうになり、あわててハンドルを切ってことなきをえた。

「ちょっと、どこ見てるのよ!」

愚妻が金切り声をあげたが、私はうっかりしていたのでない。
ちゃんと道路標識を確認して右折しようとしたのだ。

「このわしが間違うということは、道路標識が問題なのだ」

私は思ったとおりを口にしたのだが、
「間違えるのはあなただけでしょ!」
愚妻が道路標識の肩を持ち、
「あなたは考えているようで、なにも考えていないのよ」

ブツブツといつまでも文句を言っていた。

好きで間違える人間はいない。
だから間違いを咎めてはいけない。
このことに気づけば、相手に対して寛容になれるのではないか。

そのことを愚妻に話して聞かせたが、
「そんなこと言っているから、いつも間違えるのよ」

寛容とはほど遠い批難の嵐だった。

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