歳時記

心の乱れは煩悩のせいか

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一進一退と言うのか、愚妻の薬の副作用は日によって違う。

ここ数日は体調が悪いと言ってソファにひっくり返っていたが、先ほど私が居間でプッとオナラをすると、

「ちょっと、やめてよね!」

怒った。

元気になれば私に文句を言うのが常で、これは復調の兆しだろう。
結構なことだ。

テレビニュースで、ウナギの蒲焼きを観ると、

「しばらくウナギを食べていないわねぇ」

と言い出した。

「連れて行け」
とは言わないで、謎かけのようにするのが、言い出しっぺにはならないとする愚妻のズルイところである。

法務も忙しく、明日は仕事をしようと決めていたのだが、せっかく復調してきたのに知らん顔もできない。

「じゃ、明日、行くか」

しょうがないので、成田市のウナギ店に行くことにした次第。

「熱燗か? 冷酒か?」
嫌味で問うが、平然と、
「明日は暑そうだから冷酒かしらねぇ」
ゲンキンなものである。

親鸞聖人が比叡山で修行中、暗い琵琶湖の湖面を見下ろしながら、こう呻吟(しんぎん)したという。

『定水(じようすい)を凝(こ)らすといへども識浪(しきろう)しきりに動(うご)き、心月(しんげつ)を観(み)ずといへども妄雲(もううん)なほ覆(おお)ふ』

意味は、
「私の心は、なぜあの湖のように静まらないのか。心にさとりの月を眺めようとしても、煩悩に覆われて見ることができないでいる……」

愚妻の一言半句に私の心が乱れるのは、きっと煩悩のせいだろうと、自分に言い聞かせるのである。

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