歳時記

愚妻のライン

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昨夕は、近所の日帰り温泉へ出かけた。
久しぶりである。

愚妻の言いつけどおり風呂の掃除をしようかと思ったが、面倒になり、日帰り温泉にした次第。

で、これも言いつけどおり入浴カードを持ち、タオル代の小銭を用意し、日帰り温泉の駐車場に停めたところで、
チン!
とラインの音。

イヤな予感どおり、見ると愚妻からである。
私が風呂掃除をサボって日帰り温泉に来たことを見抜いているのか。
地獄耳という言葉があるが、離れていても「地獄目」である。

手術は右の乳房なので、しばらくラインも寄こさないだろうとタカをくくっていた私が愚かだった。

「右手が動くのか?」
ラインを返す。

「動くけど、つい無意識に動かしてしまい、ビビビと痛みが走る」

手術した翌日なのに、無意識とはいえ動かすとは愚かなやつだ。

「いま仕事中だ。痛みが出るといけないから早く寝ろ」

ラインを中止させ、私はそそくさとクルマを降りたのである。

娘がゴミを捨てに日曜に来るとメールがあった。
法務が立て混んでいて、日曜は不在だと伝えたが、
「居なくてもいいのよ」

有無を言わさぬ返信。

ひょっとしてゴミ捨ては口実で、愚妻の指示を受け、ちゃんと生活しているか様子を見に来るのではないか。

「ちょっと目を離すと、ろくなことをしないんだから」
愚妻の私に対する口癖が脳裡をよぎるのである。

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