通販で買ったのだと言って、愚妻が非常用の小型ランタンを私の自室に持って来た。
「ほら、こうするのよ」
頭部を引っ張ると、ピカッとまぶしく光るのだ。
しばらく災害用品を買わないと思ったら、禁断症状が出たのか。
嫌味を言おうかと思ったが、相手は乳ガンだ。
ここはヨイショすべきだろう。
「おっ、よく光るな」
「でしょう。6個あるのよ」
「6個も!」
「そう、6個でワンセットなの。これで停電は大丈夫よ」
「早く停電するといいな」
これはちょっと言い過きかと思ったが、愚妻は意に介さず、
「じゃ、各部屋に置いておくわね」
上機嫌で言ったのだった。
予定どおり年明けの手術となった場合、療養のため温泉に出かけたほうがいいだろう。
私が提案し、名湯で著名な温泉地を候補に挙げ、ああでもない、こうでもないと居間で話し合ってから、
「で、温泉に入れるまでに傷口が癒えるのはどのくらいかかるんだ?」
「どんな手術になるのか説明も受けていないのに、治る期間なんかわかるわけないでしょ」
「それもそうだな」
立ち上がったついでに、テーブルの上のランタンの頭部を引っ張る。
ピカッ!
まぶしく光る。
来月はクリスマス。
我が家のイルミネーションである。