歳時記

病人は強し

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明日は、当道場の山中湖合宿である。
稽古開始は朝9時からなので、拙宅を5時出発となる。

長い一日になる。
もっとも稽古は指導員たちがやるので、私のような「枯れ木」は、山のにぎわいのようなものだが、明後日は午前中から法務が2件入っている。

どちらも四十九日法要で、私が通夜・葬儀に出仕している。
宿泊せず、夜の懇親会が終わればトンボ帰りである。
「枯れ木」も楽ではないのだ。

愚妻の頭髪が抗ガン剤の影響で少し薄くなってきた。
「裾を刈り上げたらどうかしら?」

昨夜、問われて、
「いいんじゃないか」

返事のしようがなく、そう言うしかあるまい。

で、先程。

「予約したから行ってくるわよ」
「どこへ」
「美容室」
「何しに?」
「ちょっと、昨日の夜、言ったでしょ!」

すっかり忘れていた。
私だって忙しいのだ。
愚妻の頭髪まで構っているヒマはない。

そう言いたいが、言えば〝火に油〟。
ここは乳ガンに免じて、
「スマン、スマン」
謝った次第。

居直れば病人のほうが強い。
弱者とは何なのか、いささか考えさせられるのである。

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