歳時記

愚妻の接種と発熱

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一昨日、愚妻が3回目のワクチン接種をした。

接種した日は何でもなかったが、翌朝、発熱し、注射を打った腕の部位の痛みを訴える。

私には励ますこと以外、何もできない。

だが人間は、励まされると二つのタイプに別れる。
一つは、「そうだ、頑張らなくちゃ」と克己心に富むタイプと、より一層の同情を引こうとして、具合の悪さをさらにアピールするタイプだ。

愚妻はどっちか。

たしか二十年ほど前になると思うが、夜中、愚妻が二階の自室から階下に降りるとき階段を踏み外し、ドドドと大きな音を立て、
「痛タタタタ」
と唸り声を発したことがある。

二階の自室で寝ていた私はこの声を耳にしたが、面倒なので放っておいたところ、いつまでたっても「痛タタタタ」がやまない。

理由はわかっている。

言外に「見に来い」と言っているのだ。
つまり、「心配」と「同情」の要求なのである。

しょうがないからベッドから出て階段に行き、
「大丈夫か?」
と声をかけたらたちまち元気になった。

こういう女なのだ。

接種の発熱と腕の痛みにうっかり同情すれば、さらに具合の悪さをアピールするだろう。

だから、私は叫んだ。
「おい、救急車を呼ぶか!」

すると、どうだ。
「大丈夫よ」
たちまち元気になったのである。

人を見て法を説いたのはお釈迦さんだが、私は愚妻の性格を勘案しながら言葉をかけるのだ。

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